赤ちゃんの寝かしつけといえば、やさしい声で「子守唄」を歌う、というイメージがありますよね。日本だけではなく、世界各地で様々な子守唄が歌い継がれています。
けれど、どうして寝かしつけに子守唄が役立つのでしょうか。また、寝かしつけに役立つのは、赤ちゃんだけでしょうか?
子守唄について、改めて専門的な視点からご紹介していきます。
どうして寝かしつけに子守唄が役立つの?
子守唄を歌えば自然に子どもが寝てくれるようなイメージがありますが、実は、子守唄に眠くなる効果がある訳ではないのです。子守唄を歌うと、親も子も自然に「寝かしつけに良い状態」になるので、結果的に眠りを促すことが期待できます。
子守唄のメリット
①親の声を聴いて安心する
子守唄の一番のメリットは、お母さんやお父さんの聞きなれた声を聞き安心感を得られて、リラックスできることです。リラックスしている状態では副交感神経が優位になりますので、眠りにつきやすくなります。
*副交感神経と入眠についてはこちらの記事で解説しています。
また、他の入眠儀式と同じように、お母さんお父さんの声で子守唄を聞いたら寝る、という風に習慣化することで、寝かしつけに効果を発揮することも期待できます。
②呼吸が深くなる
子守唄に限らず、音楽は聞いている人の呼吸の早さを変えることができます。例えば、多くの人を高揚させるために太鼓などの音をだんだん早く打つ場面を見たことはないでしょうか。太鼓が早くなるのに伴い、聞く人の呼吸のリズムも早くなり、興奮させる効果があります。
子守唄はその反対に、ゆったりとした早さで歌います。
子どもの呼吸よりも少しゆったりとした早さで歌うと、子どもの呼吸も歌に合わせてだんだん遅くなります。ゆっくり呼吸すれば、自然に、深く吸うことにつながるのです。深い呼吸も、全身をリラックスさせ、眠りにつきやすくなることが期待できます。
③親の心が落ち着く
子守唄を歌うと、歌う親自身の気持ちが落ち着くという効果もあります。
寝かしつけの時に大人がイライラしていて、子どもがそれを敏感に感じ取り、なかなか寝つかないということを経験した人は多いかと思います。ですから、大人の気持ちがリラックスすることも寝かしつけにとってはとても重要です。
声を出して歌うことは、ストレスの発散にもつながりますし、ゆったりとしたリズムの音楽は、歌っている人自身の気持ちを落ち着かせることにも役立ちます。
また、以上のような効果は赤ちゃんだけではなく、幼児でも同じです。特に赤ちゃんの頃からずっと聞いていた子守唄は、幼児期になっても「入眠の曲」として認識されていることが多く、寝かしつけに役立ちますので、ぜひ幼児期になっても歌ってあげてください。
子守唄の歌い方
子守唄には「こんな風に歌わないといけない」というような決まりは特にありません。親子ともに心地よいことが大事なので、「こうしなくちゃいけない」という想いに縛られない方が良いですよね。
以下のような点を意識するとリラックスしやくなるので、参考にしてみてください。
ゆったりとした呼吸の速さで
子守唄を歌う早さは、ゆっくり呼吸をするくらい、というのが1つの目安になります。普通に歌うよりも、もう少し遅く歌うことを意識してください。普段は一息で歌えるようなところを、途中で1回息を吸って、2回に分けて歌う、というのが分かりやすいと思います。
あまり抑揚をつけない
日中、子どもと楽しむ時には、はずむように歌ったり音の高低差を強調したりと、元気一杯に歌いますよね。でも、寝かしつけに向いている歌い方はその逆です。わざと平板に、抑揚をつけずに歌う方がいいです。クラシックの子守唄などには、音の高いところがありますが、寝かしつけが目的の時は、裏声で歌い上げるようなことはしないで、かすれるくらいでちょうどいいです。
ささやくような声
大声で子守唄を歌う人はいないと思いますが、それでも、子どもに聞こえるくらいの音量で歌っている人が多いと思います。でも、子守唄は、ささやくような声で充分。特に添寝をしたり、抱っこをしたりしている時は、音として聞こえなかったとしても、親の息遣いは充分に伝わっています。
子どもたちも、歌詞の1語1語を聞いている訳ではないので、歌詞を忘れてしまった時も、何事もなかったように、「んんん~」とハミングで歌い続けてくださいね。「歌詞なんだっけ?」と、歌が急に止まると、子どもが「あれ?」と思い、覚醒してしまう場合もあるので、曲の終わりまでは歌い続けてください。
何度も繰り返してOK
子守唄はあまり長くないものが多く、1曲があっという間に終わってしまう、と感じるかもしれません。1回歌ったくらいでは、きっとまだ子ども寝ていないことでしょう。1曲歌い終えたからと、他の曲に変える必要はありません。同じ曲を何度も繰り返して歌ってくださいね。
むしろ、ころころと曲が変わると、その度に、子どもが「次は何かな?」と気になってしまうので、ずっと同じ曲の繰り返しの方がいいです。2番や3番の歌詞を覚えていたら、続きを歌えばいいけれど、ずっと1番でも全く問題ありません。
子守唄として歌うのにおすすめの曲
子守唄の効果や歌い方は分かったけれど、「子守唄」ってどんな曲があるのか良く知らない、とか、なじみがなくて歌いにくい、と感じる人もいるかもしれませんね。
「子守唄」として作られた曲以外にも、寝かしつけに向いていて、子守唄として歌うのにおすすめの曲があります。お母さんお父さんの歌いやすい曲を、ぜひ見つけてみてください。
子守唄
まさに寝かしつける時に歌うことを目的に作られた歌です。日本の各地域で昔から歌い継がれた歌もありますね。また、「子守唄」は世界中にあるので、世界の様々な地域の子守唄や、クラッシックの作曲家たちの作った子守唄もあります。
ゆりかごのうた
1921年に発表されてから、幅広く親しまれています。メロディーも歌詞もとても美しい歌。情景をイメージしながら歌えば、大人の心も穏やかになります。
ねんねんころりよ
地域を超えて、幅広く知られている子守唄です。
歌いだしの「ねんねんころりよ おころりよ ぼうやは よいこだ・・・」の、「ぼうや」のところを、お子さんの名前に変えて歌うといいですね。
わらべ歌
子どもたちが遊びなどの日常生活の中で、昔から伝えられ、歌い継いできたのが「わらべ歌」です。わらべ歌は、音程が平板で、早さもゆったりしています。また、歌詞も日本の昔ながらの言葉を用いていて、音の響きが心地よいため、寝かしつけに歌うのに適しています。
最近はわらべ歌講習などもあるので、特別なものや難しいものだと感じるかもしれませんが、決してそんなことはありません。「げんこつやまのたぬきさん」「いっぽんばしこちょこちょ」など、お母さんお父さんたちも、わらべ歌だと意識せずに親しんでいることも多く、なじみのあるメロディーなので、遊びや生活の場面でも歌うといいですよ。
「ひらいたひらいた」「おふねはぎっちらこ」などを、言葉の響きを感じながら歌ってみてください。
「ひらいたひらいた」
子どもの頃、何人かで手をつないで丸くなって遊んだ思い出のある人もいるかもしれません。語り掛けるような優しいメロディーが、寝かしつけに向いています。
「せんぞやまんぞ」
「せんぞやまんぞ、おふねはぎっちらこ・・・」という歌詞で、子どもを膝の上に載せて、揺らして遊ぶことの多いわらべ歌です。寝かしつけで歌う時には、波に揺られる小舟のイメージで歌ってみてください。
童謡・子どもの好きな歌
子守唄のための特別な歌でなくても、子どもの好きな歌をゆっくり静かに歌っても、寝かしつけには効果があります。とはいえ、子どもが好きすぎて歌を聞くだけで目が輝くような歌や、いつも踊って遊んでいるような歌ではなく、もう少し静かな歌がいいですね。できれば、「眠る時用の歌」として、普段の遊びには登場させない方が良いかもしれません。
「おおきな古時計」
「おおきな古時計」の情緒あるメロディーは、大人の気持ちも落ち着き、寝かしつけにも向いています。ストーリーを思い描きながら、ゆったりと歌うといいですね。「100年やすまずに ちくたく ちくたく」のところは、優しく揺れるのにぴったりです。3番までありますが、1番だけでもいいですよ。
「ゆうやけこやけ」
夕焼けから日が暮れるまでの情景を歌った「ゆうやけこやけ」もいいですね。情景をイメージして歌うと、自然に心が穏やかになれそうです。
親の好きな歌
親の気持ちが落ち着くことも、子どもがリラックスするためには大切、とお伝えしました。そういう意味で、お母さんお父さんの好きな歌を歌ってもいいんです。バラード系の曲や、ゆったりと想いを伝えるような曲調のものが向いています。歌詞のない曲のハミングでもいいですね。ただ、好きな曲だからと言って、盛り上がりすぎないように静かに歌ってくださいね。
まとめ
子守唄は寝かしつけに直接的に効果があるわけではありませんが、歌えば、親も子も自然に「寝かしつけに良い状態」になります。お母さんお父さんの声を聞くことで子どもはリラックスできますので、上手に歌えないから、などと難しく考えずに、親子の好きな歌、心落ち着く歌を、まずは歌ってみてくださいね。