ナルコレプシーという病気を聞いたことがありますか?
居眠り病と呼ばれるこの病気は何気無く生活している中で、楽しいことがあり笑っている最中でも、突然強い眠気に襲われ、スッと眠ってしまう病気です。
いつも学校の授業中に眠ってしまうと言われる子を持つお母さん、お父さんは思い当たることがないかチェックしてあげましょう。
ナルコレプシーとは一体どんな病気?
この聞きなれない病気の名前はフランス語に由来した名前です。フランス語でナルコとは“眠り”、レプシーとは“発作”を表します。
この病気を持つ人は、日中に急に眠くなって寝てしまったり、授業を受けている時でも友達と楽しく話していても眠ってしまうので、怠け者、態度が悪いと誤解をされてしまうこともあります。その事から、子供達の中では笑いの対象になったり、いじめにつながることもあります。
また、この病気は世界で報告されている統計と比べて、日本人に特に多い病気です。世界では2000人に1人の人がかかると言われている一方、日本では3倍以上の600人に1人の人がこの病気を発症していると報告されています。子供や青年に多く、発症のピークは10代なかばです。中には小学生頃からその症状が見られる人もいます。
どうして発症するの?
この病気はオレキシンという脳から出される神経伝達物質の不足が原因で発症すると言われています。
オレキシンは、起きている状態を維持する働きがあります。
どうしてオレキシンが不足になってしまうのかの原因ははっきりとはわかっていません。しかし、この病気を持つ患者さんのほとんどの方でオレキシンの量が低下していることが報告されています。
こんな症状はありませんか?
通常、私たちの眠りはノンレム睡眠から始まりますが、ナルコレプシーの人は眠りに入るときに、レム睡眠から始まります。
体は眠っているのに、脳は起きていて活動しているレム睡眠では金縛りや幻覚をみることがあります。そのため、以下のような症状をみることが特徴です。お子さんが次のことを訴えていないか確認してみましょう。
日中の睡眠発作
学校の発表会やテストなど、通常ならば緊張しているような場面ですら急に堪え難い眠気に襲われ、眠ってしまう。または、全く眠気を感じていなかった状態から、次の瞬間急に眠ってしまう睡眠発作が見られます。
情動脱力発作(カタプレキシー)
カタプレキシーとは緊張したり、笑ったり、怒ったりと言った感情の動きが見られる時に、急に体に力が入らなくなってしまう発作です。カタプレキシーはナルコレプシーを持つ人に必ず見られる症状ではありませんが、特徴的な症状の一つです。突然、膝から力が抜けて立っていられなくなったり、口の周りの筋肉が動かしにくくなって話しづらくなったりなどの症状が見られます。
金縛り
睡眠麻痺とも呼ばれます。脳は起きているのに筋肉が動かず、体が動かない金縛りの状態になります。私たちは、正常なときにも稀に金縛りを経験することはありますが、ナルコレプシーの患者さんは頻繁に金縛りになることがあります。
入眠時幻覚
眠りに落ちる時に、とても鮮明な夢を見ます。その鮮明さはまるで幻覚を見ているように感じるほどです。金縛りも入眠時幻覚も、眠ったあとすぐに現れるレム睡眠が原因です。
子供と一緒に出来る睡眠障害のスクリーニング
うちの子の眠気って正常?異常?と不安に思う時はおうちで子供と一緒にできる睡眠障害のスクリーニング、「エプワース睡眠尺度テスト」(子供用(ESS-CHAD))をやってみましょう。
以下の診断項目に0-3点の点数をつけていきます。
10点以上の場合は、なんらかの睡眠障害が疑われることがあります。
だいたいいつも眠ってしまう | 3点 |
しばしば眠ってしまう | 2点 |
時に眠ってしまう | 1点 |
眠ってしまうことはない | 0点 |
診断項目
1.座って読書をしている時 |
2.テレビを見ている時 |
3.午前中に学校の授業を受けている時 |
4.車やバスに座って1時間以上乗っている時 |
5. 午後に横になって休憩をとっている時 |
6. 座って人と話をしている時 |
7. 昼食後、静かに座っている時 |
8.座って食事をしている時 |
どこの病院で相談すればいい?
うちの子の眠り方、少し変かな?もしくは上記の症状に当てはまる気がする、と思ったら病院で相談してみましょう。何科に行けばいいの?と悩むところですが、専門の知識のある先生は以下のような科です。
また、なかなか行きづらいときはまずはかかりつけの小児科でお話をしてみましょう。
- 睡眠外来
- 精神科
- 精神神経科
- 神経内科
病院ではどんな治療をするの?
- お薬で治療
症状に合わせて(眠気、情動脱力発作、夜の睡眠障害)必要なお薬を飲む治療法です。 - 行動療法
他の睡眠障害と同じように、規則正しく寝て、起きるという生活習慣を送ることで改善が見られることがあります。
また、病院では問診の他にも終夜睡眠検査を行うことがあります。これは、一晩病院に泊まって、寝ている間の体、脳の状態をチェックする検査です。睡眠時無呼吸症候群の診断にも使われますが、ナルコレプシーと睡眠時無呼吸症候群は併発して起こることもあります。
睡眠時無呼吸症候群についてはこちら
ナルコレプシーに似た病気
突発性過眠症と呼ばれる病気はナルコレプシーによく似た疾患です。この疾患も活動中に突然眠くなってすっと眠ってしまいます。ナルコレプシーとの違いは、突発性過眠症では一度眠ってしまうとそのまま眠る時間が長い点、うたた寝をしても快復感が感じられない、夢を見ることが少ないという点です。
ナルコレプシーと診断された子供の声
ナルコレプシーを持つ子供の中には、適切な診断がされていないため、本人も困惑していたり、周りからの理解を得られずに苦しんでいる場合があります。
この男の子の声は、ナルコレプシーであることが診断される前の子供に良くあることです。周囲の理解が得られない、または自分自身の状態が理解出来ていないことから、自分はダメな子であると自信を否定してしまうことも珍しくありません。病気であることがと自他共に理解することでしれを防ぎ、子供にとって健康な心の発達を促すことは大切です。
子供への対応Q&A
Q1:子供が急に眠ってしまったらどうすればいいですか?起こすべきか寝かせておくべきなのか…
A:ナルコレプシーの診断がついたお子さんに対して、日中の居眠りの症状が出た時はその時々の環境にもよると思いますが、少しそのまま寝かせてあげてください。10分でも寝かせてあげると、スッキリとした状態に戻り元の活動に戻ることができます。
Q2:何かやらせてはいけないこと、気をつけることってありますか?
A:小学生同士、自転車で遠くへ遊びに行くこともあるかと思いますが、眠気を感じてから居眠りをするまでの時間が短い場合、または脱力発作を頻繁に起こす場合は、事故の原因になることがありますので、要注意です。その他、急な居眠りや脱力発作が命取りになるような行動を1人でさせることは避けるようにしましょう。
まとめ
ナルコレプシーは子供が発症すると自分も周りも、怠け者、居眠りをしてしまうダメな子と思われてしまうことがあります。
お父さん、お母さん、学校の先生、また友人を含む周りの人たちがきちんと病態を理解してあげることで、子供が自分を居眠りしてしまうダメな子だと否定することなく生活できるようになります。
何かおかしいと思ったら病院で相談してみましょう。