赤ちゃんや子どもに必要な睡眠時間は?睡眠不足の危険性を医師が解説

赤ちゃんや子供にとって、眠りはとても大切なものです。

よって、大人に比べても多くの睡眠時間が必要ということはご存知かと思います。

しかし、具体的に必要な睡眠時間とはどれくらいなのでしょうか。

年齢によってどれくらいの睡眠時間が必要なのか、その推奨時間を知って、年齢に合わせた生活リズムを考えましょう。

 

赤ちゃん・子供に必要な睡眠時間

2015年にアメリカ睡眠財団(National Sleep Foundation)は、米国の睡眠専門家や小児科学会、生理学学会、精神医学学会などをはじめとする多くの専門家を集め、過去10年に発表された312本の学術論文を参考に、新生児から大人に到るまでの各年齢別の理想的であると考えられる睡眠時間を報告しています。

新生児:0-3ヶ月

  • 推奨する睡眠時間:14-17時間
  • 推奨範囲外時間:11時間以下、19時間以上

特に生まれてすぐの赤ちゃんは体・脳の中での生活リズムが決まっていません。2〜3時間おきに目を覚ましてはミルク、排便を繰り返します。

新生児は浅い眠りの割合が多く、周りの音ですぐに起きてしまうこともありますが、眠くなったらまた自由に眠るので、日中はそれほど静かにすることに気を使わなくても大丈夫です。

しかし、眠いのに眠れないときは、それが原因で泣いたり、ぐずり始めることがあります。その場合は直ちに暗い静かな部屋に連れていくなどの配慮をし、赤ちゃんの睡眠のサポートをしてあげましょう。

赤ちゃんの中で少しずつ朝や夜の区別がつくようになるのは生後2〜3ヶ月経ってからです。この頃から一回で飲むミルクの量も増えるので、その分夜に長い時間眠れるようになってきます。

乳幼児:4-11ヶ月

  • 推奨する睡眠時間:12-15時間
  • 推奨範囲外時間:10時間以下、19時間以上

夜にまとまって寝る時間がだんだん増えてきます。

朝に赤ちゃんに陽の光を浴びさせることで、1日のリズムを調整する体内時計が形成されやすくなるので、晴れた日は午前中にお散歩に連れていくといいでしょう。日中のお昼寝を3回ほどすることで、夜に6時間ほどまとまって寝ることができる赤ちゃんも出てきます。

生後7〜8ヶ月を過ぎた頃から夜泣きをする赤ちゃんも出てきます。この時期にどうして夜泣きが始まるかの原因は明確ではありませんが、子供の歯が生えてくる時期であるため歯肉に感じる不快感や、段々と日中の活動の幅が広がり、刺激的な夢を見やすくなっているのではないかと考えられています。

生後7ヶ月をすぎたら、お昼寝は午後3時までに終わらせるようにして、なるべく長く夜にまとまって眠れるようにしましょう。

幼児:1-2歳

  • 推奨する睡眠時間:11-14時間
  • 推奨範囲外時間:9時間以下、16時間以上

朝起きて夜眠るという生活スタイルができるような体になっているので、親が一定の生活リズムを決め、そのリズムを崩さずに生活させることが大切です。

夜遅くに仕事から帰ってくる親に合わせて、途中で赤ちゃんを起こしてしまう家庭も少なくありません。

親子でのコミュニケーションも大事ですが、これによって赤ちゃんの睡眠を奪っているので、出来れば朝一緒に起きてコミュニケーションの時間を確保するなどの工夫を考えてみるといいでしょう。

特に、眠り始めて最初の数時間の睡眠は最も深い眠りに落ちる、成長にとって大切な睡眠時間であることを理解してください。

未就学児:3-5歳

  • 推奨する睡眠時間:10-13時間
  • 推奨範囲外時間:8時間以下、14時間以上

自分一人でできることも増えてくるので、夜にベッドに入るまでの習慣もこの時期にしっかりつけさせましょう。

寝る前のルーティーンとして、お風呂で体を温めて、歯を磨いてから布団に入るなどをしっかりと頭に覚えさせることで、子供の体が睡眠に入りやすくなります。また、ベッドでは遊んだり騒いだりすることを普段からさせないことで、ベッドに入ると寝る時間なのだ、と脳が認識しやすく、眠りにつきやすくなります。

保育園ではお昼寝の時間を確保しているところも多いので、子供が日中何時ころに何時間くらいお昼寝をしているのかを把握しておきましょう。

就学時:6-13歳

  • 推奨する睡眠時間:9-11時間
  • 推奨範囲外時間:7時間以下、12時間以上

小学校に上がると習い事や勉強なども始まり、忙しくなることで夜更かししやすくなります。また、学校で話題になる流行りのテレビ番組を見るために夜遅く起きていることを主張する子供も少なくありません。

この年齢の子供には、自分の意思で生活スタイルを決めさせるのではなく、どのようにその主張を尊重しながら睡眠時間も確保できるか親子で相談しましょう。テレビは録画する、塾や習い事は夕飯の前に終わらせられる時間のところを選ぶ、など解決策を話し合いましょう。

また、強い光を発するゲームやタブレットなどの電子機器は一日何時間、何時から何時の間だけと決め、寝る前にだらだらと触らないようなルールを決めましょう。特に就寝前の1時間はテレビを含む電子機器は避け、本を読む習慣をつける時間に当てるのもいいでしょう。

 

睡眠不足の日本人

成人(26〜64歳)は7〜9時間が推奨されていますが、日本人の睡眠時間は世界でも少ないことがわかっています。

大人の睡眠時間が少ないと、それに比例するように子供・赤ちゃんの睡眠時間も少なくなる傾向にあります。

赤ちゃんや子供の睡眠時間が少なくなるとどのような危険性があるのでしょうか。

赤ちゃんの睡眠不足

2017年に行われた17カ国の3ヶ月から3歳を対象にした調査では、日本の赤ちゃんの睡眠時間は調査国の中で最も短く昼・夜の睡眠時間を合わせて11.6時間でした。1位のニュージーランド(13.3時間)に比べると2時間も睡眠時間が少ないという結果でした。

赤ちゃんの睡眠不足は脳と体の発達に悪影響を及ぼすことがわかっています。寝不足により以下のことが引き起こされます。

  • 骨や筋肉の成長に必要な成長ホルモンの分泌が十分出なくなる
  • 脳の発達、記憶の定着に影響が出る
  • 成長後のBMIが高い傾向(肥満気味)になる
  • 人や周りの環境に興味を失う
  • 刺激に対して鈍感になる
  • ぐずりやすい
  • 顔を手に当てる仕草が増える:耳を引っ張る、目をこする

また、過去の報告では赤ちゃんの睡眠不足と関連がある因子として、なかなか食事をしない事、睡眠から覚醒しにくい事もわかっています。

子供の睡眠不足

子供は大人と同じようなリズムで生活できるようになっても、実際には大人よりも多くの睡眠時間が必要です。よって、大人の生活リズムに合わせてしまうと睡眠不足になってしまいます。

子供の睡眠不足によって以下のことが引き起こされます。

  • イライラする
  • 集中力の低下
  • 多動傾向
  • 学業成績の低下
  • 疲れやすい

一見、睡眠不足と結びつかず、なかなか原因に気がつけない親も多いです。うちの子は落ち着きがない、集中力がない、と個性であると割り切ってしまい、原因追求をしない場合も多いからです。

子供は自分で疲れていることや集中力が続かないことをうまく周りに伝えられないことがほとんどですので、しっかりと観察してあげましょう。

また上述したように、大人が遅くまで寝ないせいで子供の就寝時間も引きずられて遅くなりがちの家庭も多く見られますが、早く眠らなきゃ、眠らせなくては、と焦ってイライラするよりも、まずは家族みんなで早起きをして朝ごはんを食べる習慣を作ることが早寝にもつながります。

 

まとめ

赤ちゃんや子供にとって睡眠は成長するためにとっても大切なものです。特に幼児期以降の子供は親が正しく生活リズムを設定してあげなければ睡眠不足になる子供も出てきます。

睡眠時間には個人差がありますので、推奨の時間範囲内でお昼寝回数を調整しながら、個人や年齢に合わせた睡眠スケジュールを考えてあげましょう。

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