【医師解説】夜驚症ってなに?原因と対処法を知ろう

夜に寝ている子供がいきなり大声で泣き、恐怖の叫び声をあげる、これってもしかして寝ぼけているの?それとも悪夢?あとから聞いても本人は覚えていないようだし…

頻繁にそれが続くようなら、それは夜驚症の可能性があります。横で見ている方もびっくりしてしまう夜驚症ですが、慌ててしまわないようにこの状態の正体を知っておきましょう。

 

夜驚症って発達障害?

あまり聞きなれない夜驚症という言葉ですが、これは “やきょうしょう”と読みます。また、睡眠時驚愕症とも呼ばれます。

聞きなれないとはいえ、100人の赤ちゃんや子供のうち、1−5人が夜驚症であると報告されているので、決して少ない数字ではないでしょう。

また、3歳から6歳の子供に多く見られと言われています。この睡眠障害の主な特徴は入眠から3時間たったころに起きる、次のような状態です。

  • 急にパニックになって激しく手足をばたつかせたり、恐怖を体験しているような叫び声をあげる
  • 大声で泣きわめく
  • 大量の汗をかく
  • 瞳孔(黒目)が見開く
  • ハアハアと呼吸が早くなる。また、ドキドキと脈も早くなる。
  • 大丈夫?と声をかけたり、名前を読んでも返答しない

1−10分ほどこのような恐怖・パニック状態に陥り、大騒ぎをしたかと思うとまた何事もなかったかのようにぱたっと静かになって寝てしまいます。

ほとんどの場合は、お子さんに朝起きてから、昨日は怖い夢を見たの?と聞いても記憶にありません。

夜驚症になる子って頭がいいって聞いたんだけど、本当?

夜驚症になる子供は天才の証だ!という人がいます。これって本当なのでしょうか?

夜驚症は、一般的に感受性が豊かな子供ほどなりやすいと言われています。また、3分の1の夜驚症の子供はそれを発症するきっかけの出来事があります。

例えば、事故にあうような怖い体験、家族で旅行や遊園地に行く楽しい体験、習い事の発表会や幼稚園の合唱のような緊張した体験などが引き金になります。よって、感受性が豊かで、体験を通した刺激を脳に受けやすい子供が夜驚症になりやすいのです。

また、いわゆる過去に天才と言われたような人たちは感受性が豊かであった人が多く存在します。

このことが、感受性が豊かな人がかかりやすい夜驚症になる子供は、天才であると言われる理由かもしれません。

発達障害の可能性もあるの?

 発達障害の患者には、二次障害として睡眠障害の発症リスクが高いとされています。

ADHAや自閉症といった、発達障害と診断されている人は高い確率で睡眠の問題も抱えています。つまり、発達障害の子供の中には夜驚症になる子供も普通の子供より多くいるのです。

しかしその逆である、睡眠障害があるから発達障害を引き起こすということはありません。

夜驚症だからと言って発達障害になるかもしれないと過剰に心配する必要はありません。

 

夜驚症はなぜ起こるの?原因はなに?

このとても不思議な状態の原因は一体何なのでしょう。

寝ている間の脳の状態はレム睡眠とノンレム睡眠に分かれます。

脳が活発に活動して体が休んでいるレム睡眠、一方、体は起きているのに脳がまだ眠っている状態がノンレム睡眠です。

夜驚症は、このノンレム睡眠のときに、脳が完全ではなく少しだけ覚醒した状態に入ってしまうことで起こります。

この中途半端に覚醒が起こってしまう理由ははっきりと解明されていません。

子供の睡眠と覚醒の機能が発達しきっておらず、睡眠から上手に覚醒できないことや遺伝要素、寝不足、寝る時間が日によってずれることによる睡眠リズムの乱れ、日中に恐怖を感じたり強く興奮するような刺激を体験する、などが原因として考えられています。

中には、自分の育て方が影響するのではないかと悩む方もいますが、親の育て方や教育の仕方、しつけの仕方、話し方は夜驚症の原因とは関係ありません。

前述したように、楽しい思い出の刺激でも誘発されるときはされるので、強く叱ってしまったからかもと反省して自分を責める必要はありません。

夜驚症が悪化するのを怖がってしつけをしない、必要な時に叱らないという選択をする必要はないので、日中は叱る時には叱り、普段と変わらない態度で子供に接しましょう。

 

夜驚症はどうしたらいいの?対処法を解説

パニック状態になっているときに無理に落ち着かせようとしなくても構いません。声をかけてもほとんど反応は見られないので、そのまま見守りましょう。

暴れた時にベッドの周りに怪我につながるようなものがある場合はそれをあらかじめ動かしてあげる、ベッドの周りに柵を作って落ちないようにしてあげる、などの対策だけは考えてあげましょう。

夜驚症は成長をすると次第におさまっていくものです。それ自体が重篤な病気ではないため治療をする必要ありません。

通常一晩に1回、数ヶ月で回数が減ってきます。しかし、一晩に繰り返して騒ぎ出すことがあったり、何十分もの長い症状が何ヶ月経ってもいつまでも続くようであれば、一緒に寝ている家族みんなの生活に支障が出たり、疲れてしまうこともあります。ご家族にも負担が大きく、ストレスになるような時は病院で相談するようにしましょう。

また、何か他の病気ではないかと心配に感じるときも迷わず専門家のいる病院に行ってみましょう。

主に心療内科や精神科、睡眠外来に専門家がいますが、まずはかかりつけの小児科で話をしてみてもいいです。

病院ではどんな治療をするの?

主な治療は子供のストレスに対してのカウンセリングです。

カウンセラーの先生と子供とで、お話しをすると思ってください。少量の安定剤や漢方薬を使うことで、症状を減らすことができますが子供に薬物療法を行うことは稀でしょう。

また、大人にとっても心配な気持ちが大きくなることと、自分たちも眠りが不安定になり寝不足が続くことから、かなりストレスがかかっているはずです。

大人も心のケアが必要な時があるので、一緒にカウンセリングを受けるのもいいことです。私までカウンセリングなんて、と思う方も多いですが、大人の心が落ち着くことでその周りにいる子供の心も落ち着くため、自分は大丈夫と思わず、子供のためにもカウンセリングを検討しましょう。

 

夜驚症と似た病気

夜驚症と似た病気も存在します。

間違えて夜驚症であると判断して、放っておいてしまうと怖い病気もあるので、似た症状を表す病気も知って起きましょう。

てんかん
寝ている間の脳波に以上が出て、大声を出して暴れる場合があります。夜驚症と間違えやすいのですが、日中にも意識を失うことがあったり、痙攣発作がある場合はてんかんを疑いましょう。もしこの病気の可能性が少しでもあるのであれば、早めに病院の受診をしましょう。
夢遊病(睡眠時遊行症)
夜驚症のようにパニックや恐怖を感じているような状態にはなりませんが、意識がないままに家の中を歩き回ります。夜驚症と同じようにレム睡眠からうまく起きれない状態で、同じように成長すると自然と治る場合が多いです。また、夜驚症を持つ子供の3人に1人は夢遊病も経験するとして知られています。

 

まとめ

パニックに陥っている子供を見ると不安になりますが、夜驚症のことを知った上で落ち着く時期が来るまで見守るのが基本です。

お父さんやお母さん、他の兄弟などの生活にも影響を与える場合は、どこかで相談を。友達や、周りの人に話を聞いてもらうだけでも気持ちが和らぐので、なるべくストレスを貯めない方法を選びましょう。

なぜうちの子がと思い詰めずに、うちの子供は感受性が豊かに育っている、と前向きに捉えるようにするのも対策の一つです。

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